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 鶏皮肝鍋の話

 私の彫刻の師匠はある意味のグルメでした。
 「ある意味の」と言うところが気になるかと思いますが、
 お金を掛けて美味しいものをと言うのではなく安くて美味しいものをと言う意味です。
 例えば今回の鳥の皮肝、どこのスーパーにでも売っている親鶏の皮と砂肝、レバー、心臓、腹玉などのパック、
 でも昭和40年代頃は我が町にはスーパーも少なく代わりに鶏肉屋で捌いたのを買って来ました。
 その鶏肉屋のことはまた後日に触れるとして、今回は皮肝の話です。

 仕事部屋で師匠と兄弟弟子たちと仕事をしながら「今夜一杯・・・」の話になると早速奥さんが呼ばれ皮肝の注文を・・・
 「皮を○○グラムにレバーを○○グラム、砂肝を○○グラム・・・などと部位によって注文します。
 弟子の私たちのお腹を満たす訳ですから量も半端なく、それが夕方に鶏肉屋から届くと師匠の出番、
 調理は全て師匠の「鍋奉行」です。

 何処で覚えて来たのか調理の味付けもちょっと変わったものでした。
 先ず、鶏皮を大きな鉄鍋で炒めて脂を出し次いで砂肝や心臓などを入れ、型崩れしやすいレバーは最後にします。
 肉に火が通ったらキャベツやもやしなどの野菜を加えてここから調味料の出番です。
 先ずは酒ですが日本酒ならぬウイスキーで、砂糖、醤油、コショー、少量の醤油や一味唐辛子など々・・・
 それを弟子たちは出来上がるのを楽しみに固唾を呑んで見守っている訳ですから唾液が充満!
 若いということもあり食欲が臨界状態になり、食べる時はもう不味いと思うような余裕は無かったです。

 この時の鶏皮は若鶏ではなく年老いたヒネ鶏なので脂分が少ない時はラードも足せていたように記憶しています。
 それが焦げる匂いも箸を運ぶ速さに拍車を掛けていてその香りや味は今でも鮮明に覚えています。

 決して贅沢な食べ物では無かった鶏の皮肝、
 今はスーパーでパックされたものが売られているので時折若くして故人となった師匠とその奥さんを偲びながら作っています。
 でもパック物は冷凍品で、生の鶏を捌いた直ぐの皮や肝は市内に鶏肉屋が無くなった今としては買うことが出来ないのが残念です。

 師匠に教わったのは彫刻の技術の他にこうしたことも色々で、それをしっかり伝承している今の自分を感じています。
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by sikisai03 | 2018-03-01 00:03 | たかが男の料理
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